流浪の民ノクス。 季節とともに移動する彼らは、近隣国の戦いによって居場所を失われつつあった。 戦いを避けて逃げる最中、ひとつの巻物が荷物から落ちる。 「常夜の国」と記されたその古い巻物を頼りに、カディルとリュナはその国を探すことに決めたーーー。 === === === === === === === === === === 葦ヶ原を越え、神羽山の南東、青き樹海の先に、常夜の国の入り口がある。 封じられし扉を開かんと願う者は、「インシギス」と唱うべし。 さすれば扉は自ら開き、そなたたちを受け入れん。 === === === === === === === === === ===

時は昭和初期。 銀座の鋪道をおしゃれな女性たちが闊歩し、カフェーの窓からはジャズが流れる。街角には人々が群がり、ラジオの音に耳を傾けている。 新聞には世界恐慌の影がにじみ、不安の足音が迫っているが、日々に困らない者たちは浮き立つ繁栄を享受していた。 今日は豪華特急グレイシアラインの試乗会。 特別に招かれた5名は、雪景色を眺めながら列車の旅を楽しむはずだった……。